なんとなくな日々 川上弘美

なんとなくな日々なのである。
なんとなく、思いに耽り、佇み、今ってなんなんだろう、これで良いのか、こんなものなのか、そんなことを思い。なんとなく、歩いて、なんとなく、店に入って、ビールを一杯。
ゆるゆるの生活観、ちょっとそれに疑問を抱きつつも、その中に芯の通った価値観を見出してる、悠々自適。そんな雰囲気が良い。

せめて人生の中の一時間でも、豊かな時間を持とうではないか。しみじみと、あたたかな店の中で、自分の来し方行く末を考えてもいいじゃないか。そういう考えが、いつもきざす。しかし、出来ない。店たちは「おいておいで」とわたしを招くのに、なぜだかわたしは自転車のペダルを漕ぐ足に力を入れて、いっさんと仕事部屋へと向かってしまうのだ。結局どの店にも入れない。
いま、なんとなく、日曜の午前、こうやって猫を膝に本を読んでます。
なんとなくな日々 (新潮文庫)

なんとなくな日々 (新潮文庫)