チェチェン 廃墟に生きる戦争孤児たち オスネ・セイエルスタッド
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チェチェン紛争を現地取材したルポタージュ。
小説風に書かれていて、訳も綺麗で読みやすく、重い内容なのですがさくさくと読めました。
最初のほうが現地取材のルポで、後半はロシア・チェチェン双方の子供たちに焦点を当てて戦争の悲惨さと現状が描かれています。
ロシアが悪の根源であることは前提としては居るけれど、ちゃんと双方の意見がある。どっちを批判しても、アンナ・ポリトコフスカヤとかリトビネンコみたいに暗殺されてしまうっていう危険な橋を渡る執筆ですね。
ソ連崩壊後に独立したときの大統領が、ドゥダーエフ
今のロシアの傀儡政権で実験を握るのが、ラムザン・カディロフ。この親衛隊が、カディロフツィ
この二人は覚えておきましょう。
まず、紛争が泥沼化する原因の一つにはチェチェン人の自業自得っていうのが少なからずあるんだっていうのが一つの印象です。双方に悪がある。
今まで、独裁政治内の卑劣行為を悪一色の色眼鏡で見がちだったけど、最近はどちらにも悪があるって視点で物をみるようになりつつあります。
チェチェンの民族性っていうのが純粋な平和を望めない習性があるのだ。氏族制度なんていうものがあるから、すぐにケンカしたくなる、しなくてはいけない民族なんだよね。そんなものに、イスラム教が絡んでくるものだから更に利用されやすい。
完璧な男子社会。女にはなんの自由もない、従うしかない。
名誉殺人が正とされていてる。
氏族社会。
そんな民族性で平和なんて得られるはずがない、だからプーチンが「戦争のチェチェン化」なんて戦略にでるわけだ。
結局ロシアが居なくたって、平和に自分達の国を維持できないお国柄なんだよね。現代社会のルールにのることを拒否されてしまっては、何も出来ない。国としては内政不干渉の原則に則って見てみぬふりをするしかない。それが戦争の大規模化を防ぐ一番の策だからだ。
国として見捨てるのはなんともしがたいけれど、正義ぶって大国が表舞台に出てしまうと状況悪化を招いてしまうことも知っておかないといけないんだよね。戦争したがる大国が中には居るけれど。
少なくともロシアは戦争はしたくない派なんじゃないだろうか、現在は。
そこで人権団体なるものが重要視されるんだね。
当然ロシアが仕掛けた戦争で、ロシアのやりたい放題は問題であるんだけど、下手に人権第一主義でチェチェンがかわいそうなんていう立場に立っちゃいけないってことだと思う。
チェチェン人にただただ同情してロシアを批判することだけはしてはいけない。アフガンやイランについても同じように、このチェチェン対策を西側の人権主義を掲げる国がやったとしても人道的に解決できるような問題じゃない。
ロシア兵にしてみれば、司令部に駒にされているわけだし、民間人を殺すなと言われたって戦場に出ればそういうわけにはいかない。民間人だって武器を普通に扱えるのがチェチェンなのだから。
まずは、双方の本当の現実を知ることが解決への策を見出すことになる。
隠された・報道されない現実を、わずかな・不確かな情報を元に間違った判断を市民がしてしまうことが一番危険。ナチがそうだったように。
- 作者: オスネセイエルスタッド,Asne Seierstad,青木玲
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